静岡県環境衛生科学研究所

No.113

商品テスト情報

−野菜や果物に含まれる栄養成分カロテノイド類−


 

β(ベータ)-カロチンやリコピンなどの名前は聞いたことがあると思います。これらはカロテノイドの一種です。カロテノイドは野菜や果物に含まれ、黄色や赤、オレンジなどの色をもっています。食品中には数十種類のカロテノイドが含まれているといわれていますが、その中でも、β-カロチンは体の中でビタミンAとなる重要な栄養成分とされています。それ以外のカロテノイドについては、最近になって抗酸化作用や抗がん作用といった人体に有益な様々な働きがあることがわかってきました。そこで、これらを多く含むという栄養補助食品や飲み物についてカロテノイドのβ-カロチン、α(アルファ)-カロチンとリコピンがどれくらい含まれているか調べてみました。


いろいろなカロテノイド


β-カロチン(β-carotene、β-カロテン

人参やパセリ、ホウレンソウ、かぼちやに多く含まれています。

α-カロチン(α-carotene、α-カロテン

 人参やかぼちゃに多くふくまれています。肺がんの抑制効果などがあるといわれています

リコピン(lycopene、リコペン)

トマトやスイカ、グアバ、ピンクグレープフルーツなどの赤い色の色素です。抗酸化作用があり、肝臓や膀胱がんなどの抑制効果があるといわれています。

βークリプトキサンチン

 温州みかんの中に多く含まれています。糖尿病・高血圧等の生活習慣病予防効果があるという発表が最近あり、注目を浴びています。

その他

キャベツやあんずなどに含まれるルテイン、パパイアなどに含まれるゼアキサンチンにも人体に有益な生理活性があるといわれています


表1 市販の栄養補助食品や飲み物のテスト結果

No.

名  称

β-カロチンmg/100g

α-カロチンmg/100g

リコピンmg/100g

1日に食べる量/

1

野菜加工食品

2.7

0.2

1.8

1.3

2

赤野菜加工食品

24

0.4

0.3

3

3

青野菜加工食品

0

0

0

3

4

乾燥野菜粉末加工食品

57

0.2

2.1

1.25-2.5

5

ビタミン含有糖類加工食品

61

6.5

0.5

3

6

野菜加工食品

3.0

1.1

0

2

7

クロレラ加工食品

1.4

0.8

0.7

2

8

大麦若葉エキス加工食品

2.0

0.3

0

5-10

9

ベーターカロチン含有食品

15

0.8

0.1

1

10

ベーターカロチン含有食品

1600

410

510

0.32

11

ベーターカロチン加工食品

860

140

48

1.2-1.8

12

ベーターカロチン含有食品

850

31

8.0

0.24

13

カロテノイド含有食品

2500

600

2200

0.3

14

リコピン含有食品

45

0

2700

0.2

15

焼き菓子(栄養調整食品)

2.5

0.1

0

45

16

清涼飲料水

2.7

0

0

100

17

清涼飲料水(栄養機能食品)

1.2

0.1

0.5

200

18

野菜・果実ミックスジュース

1.9

0.9

0

200

19

野菜・果実ミックスジュース

0.1

0

200

20

果実・野菜ジュース

0.9

0.1

0

200

21

にんじんミックスジュース

3.5

2.0

1.4

200

22

トマトミックスジュース

0.8

0.3

5.6

200

※栄養補助食品類(bP〜14)は商品の表示から計算し、菓子、清涼飲料水(1517)は1箱もしくは1本の量、ジュース類(1822)(1200l入り)は200gとしました。

☆ 含有量の多いものは?

100gあたりの量で比較すると、ソフトカプセルタイプ(No1014)の商品に多くのカロテノイドが含まれていました。

☆ 野菜加工商品類

 No2,4,5には100gあたり24mgから61mgと比較的多くのβ-カロチンが入っていましたが、表示から、β-カロチンが添加されていることがわかりました。



☆ 1日に食べる量では?

 1日に食べる量で比較すると、ソフトカプセルのものや、にんじんやトマトを主原料とした野菜ジュース類がカロテノイドの補給源になることがわかりました。                    

テキスト ボックス:

(食べる量に幅があるものは中間値を用いてグラフにしました。)

☆ 保存性は?

 カロテノイドは比較的分解しやすい物質です。No1,2,4,5,10,11,12について、約4ヶ月室温で保管してもう一度調べて見ました。その結果、β-カロチンとα-カロチンはあまり減っていませんでしたが、リコピンは調べた食品すべてで減っていたり、中にはなくなっていたものもありました。購入後は早めに食べるようにしましょう。

☆ 表示は信用できるでしょうか?

 β-カロチンの表示は栄養補助食品類(No114)中9検体、菓子、清涼飲料水、ジュース(No1522)中8検体、あわせて17検体にありました。表示よりかなり少ないものが3検体ありましたが、あとの14検体は、表示の75%以上ありました。α-カロテンは4検体に表示があり、そのうち3検体はほぼ正確でした。リコピンは8検体に表示があり、そのうち5検体はほぼ正確でした。分解しやすい物質であることを考慮すれば,表示は購入の目安となると思われます。

☆ 価格は?

 1日分の価格は、栄養補助食品の類(No115)14円から140円でした。清涼飲料水やジュース類(No1622)は100円程度でした。


※まとめると※

一番のおすすめは野菜や果物そのものを食べること!

 野菜や果物の中には、ビタミンCや食物繊維など、今回テストしたカロテノイド以外にも健康を保つために必要なさまざまな栄養素が含まれています。また、リコピンのように今まであまり注目されていなかった成分が人体に有用なことがわかることがあります。なすやブルーベリーの色素のアントシアンも最近話題になっていますね。ですから、十分な量の多種類の野菜や果物を食べることが一番大切なことです。

野菜ジュースはあくまで補助的に

忙しくてしっかりした朝食が取れないときや、お弁当がちょっと野菜不足という場合には、にんじんやトマトを主原料とした野菜ジュースがおすすめです。1日の栄養所要量でβ―カロテンは規定されていませんが栄養機能食品としての基準値が1日摂取量あたり1.08mgから3.6mgです。

カロリー制限している人には

糖尿病などで、カロリー制限をしなければならない方には、マルチカロチンタイプ(多種類のカロテノイドを含んでいるもの)のソフトカプセルのものがいいと思われます。購入する場合は、何種類かの商品の表示を見て、含まれているカロテノイド類の種類や含有量、価格などをチェックしましょう。

野菜粉末製品はカロテノイドの補給源としては期待できません

野菜の粉末を主原料とした、粒状や粉末タイプの製品にはカロテノイド類はあまり含まれていませんでした。β-カロチンが多少含まれているものもありましたが、これは添加されたものでした。



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