静岡県環境衛生科学研究所

No.115

商品テスト情報

−市販のミネラルウォーターと静岡県の水道水−


 
 静岡県は自然に恵まれ、品質の良い原水が得られるので、全国的にみてもおいしい水が飲めると言われています。しかし近年、健康志向の高まりや水道水に対する不安から、水道水と比べて高価なミネラルウォーターの消費が伸びており、スーパーマーケットなどに並ぶペットボトル入りの水の種類も増えています。そこで、市販のナチュラルミネラルウォーター(以下「ミネラルウォーター」と呼ぶ。)と静岡県の水道水の味や成分について、調査を行いました。


1 ミネラルウォーターと水道水の味を比較してみました

ミネラルウォーター(A〜F)と県内6ヶ所の水道水(T〜Y)を、商品名や種類を知らせないでモニター(44人)に飲み比べてもらいました。

「おいしい水はどれか(6個選択)」の問いに対する回答は、図1に示すようにミネラルウォーターと水道水ではあまり差がなく、ミネラルウォーターのDが最もおいしくないという結果でした。

一方、「水道水はどれか(6個選択)」の問いについては、水道水 (T〜Y)はそれぞれ52〜75%の正解率でしたが、全体の55%にあたる24人が、ミネラルウォーターDを水道水であると選択していました(図2)。

 さらに、「どんな味やにおいがしたか」の問いには、ミネラルウォーターはほとんどが「まろやかな味」や「淡白・くせがない」という評価でしたが、Dは「刺激が強い」、Eは「硬い」という評価も多くありました。水道水は、「まろやかな味」、「淡白・くせがない」という評価が多い中でカルキ臭がするとの回答も多くありました。

★ カルキ臭とは?

 水道水のにおいで「カルキ臭」とよく言われる刺激臭は、これまで、消毒のために加えた塩素のにおいであると考えられてきましたが、最近になって、塩素と水道原水に含まれるアンモニアが結合してできる三塩化窒素によってにおいが強くなることがわかってきました。

2 ミネラルウォーターと水道水の区別はできるでしょうか

 市販のミネラルウォーターと県内の水道水は、私たちが飲んだだけで区別ができるでしょうか。ここでは3点比較式官能試験により、通常の人が識別できるか否かを調査しました。

まず、パネラー(44人)が、ミネラルウォーター(A〜F)1つと水道水(W)2つの計3つの中から、ミネラルウォーターを当てることができるか試験しました。結果は、正答率がA及びCが57%、Bが55%、Dが36%、E及びFが52%となっており、あまり高いとはいえませんでした(図3)。したがって、水道水とミネラルウォーターを正確に区別できない人もかなりいることがわかりました。

 また、おいしさに関する官能評価(おいしい、ふつう、おいしくない)を同様に行ったところ、Aのみ「おいしい」が「ふつう」を若干上回る評価であり、他は「ふつう」が最も多いという結果でした。さらに、個々の評価として、Eは「苦い、渋い、刺激が強い」、Fは「硬い」という回答もありました。

3 水の化学成分を分析してみました

おいしい水の条件として、ミネラルバランスを重視した「おいしい水の指標」(O Index、OIと略)及び「健康によい水の指標」(K Index、KIと略)が、たくさんのデータの検討をもとに提案されています。OI及びKIは、次の計算式で表され、おいしい水はOI>2、健康によい水はKI>5.2とされています。

OI=Ca2+(カルシウムイオン)+K+(カリウムイオン)+SiO2(溶性けい酸)/Mg2+(マグネシウムイオン)+SO42−(硫酸イオン)

KI=Ca2+ (カルシウムイオン)−0.87Na+(ナトリウムイオン)(mg/l)

そこで、ミネラルウォーター及び水道水の化学成分を分析し、上記計算式をもとに、OI及びKIを算出してみました(図4)。まず、「おいしい水の指標」OIは、ミネラルウォーターが比較的高くなっていました。一方、「健康によい水の指標」(KI)は、外国産ミネラルウォーターD、E、Fが特に高い値となっていました。


さらに、カルシウム及びマグネシウムの含有量を示す、硬度を算出してみました(図5)。水道水(T〜Y)は、いずれも30〜80の値でしたが、外国産ミネラルウォーターD〜Fは非常に高い値を示しました。一般に、硬度の低い水はくせがなく、高い水は人によって好き嫌いが出るといわれています。前述の飲み比べ及び官能試験でも、D〜Fは苦味や刺激、硬さ等を感じるという回答があったことからも、このことがいえると考えられます。



★ おいしい水とは?

おいしい水の要因としては、1985年4月厚生省の「おいしい水研究会」から次のような水質要件が提言されています。

1 水温は重要な要素で、体温より20〜25℃低い10〜15℃が適温とされている。暑い日など冷たい一杯の水がおいしいというのも、冷たさが味覚に爽快な刺激をあたえるからだと考えられる。

2 適度な硬度、蒸発残留物、遊離炭酸などを含む。

3 有機物の溶存量と密接な関係がある過マンガン酸カリウム消費量、臭気度、残留塩素などは水の味を悪くする。


★ 残留塩素を取り除くには?

水道水の消毒のためには塩素は不可欠ですが、水道水中に残留する「残留塩素」は、塩素臭やカルキ臭の原因となり、水の味を損ないます。そこで、簡単な残留塩素の除去方法をいくつかご紹介します(除去後は、水がいたみやすいので早めに飲みましょう)。

@     薬缶で沸騰させ、お湯が沸いても火を止めず、蓋を開けたままさらに五分間沸騰を続ける。

A     吹き出し口のついた電気ポットなどで沸騰を数回繰り返す。

B     日光にあてる。

ただし、一度沸騰させた後に冷やすと、水に溶けている炭酸ガスや空気が揮散してうまみを逃す欠点があります。


★★ まとめ ★★

1 ミネラルウォーターと水道水の官能試験では、必ずしも両者を正確に区別できるとは限らないという結果でした。水道水は、カルキ臭等の味を悪くする成分を取り除けば、ミネラルウォーターとそれほど遜色ないと考えられます。なお、ミネラルウォーターの価格は水道水の約1000倍です。

2 ミネラルウォーターについては、国産品は硬度が水道水とほぼ同じ、外国産品は硬度が非常に高い等という特徴がありました。商品に表示されている栄養成分表からも、これらのことがある程度わかりますので、購入する時の参考にするとよいと思われます。

 水源の水質を良好に保つことは、安全でおいしい水を飲むために避けることのできない課題です。水道水の源となる河川水や地下水が清らかで適量のミネラルを含んでいれば、浄化薬剤や殺菌塩素の量がわずかですみますから、おいしい水道水が得られます。おいしい水を守るためには、浄水技術の向上なども必要ですが、水質を悪くする最大の原因である水源の汚濁を防止することが、最も重要です。


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