静岡県環境衛生科学研究所

No.119

商品テスト情報

−カテキンを増量した緑茶飲料−


 

ペットボトルや缶の容器入り茶飲料は、手軽さと健康志向から若い人たちを中心に好まれ、特に緑茶飲料の売上げは数年来、茶飲料(清涼飲料水)の中でも非常に伸びています。また最近、緑茶抽出物やカテキン、アミノ酸等の食品添加物を添加しこれらの生理機能を強調したものや、厚生労働省から「特定保健用食品」の許可を受けたものなど、従来の「緑茶飲料」の既成概念にとらわれない、新しいタイプの緑茶飲料が販売されています。これら緑茶飲料は従来の緑茶飲料とどのように違うのか、またこれら飲料を利用する場合にどんなことに注意したらよいのか、調べてみることにしました。

1 調査対象

増量1

(銘柄数)

増量なし1

(銘柄数)

ペットボトル入り

9

6

缶入り

1

0

紙パック入り

1

0

添 加2

6

3

無添加2

5

3

注1)     カテキンが増量された旨の表示があるなしで区分

注2)     茶葉及びビタミンCの他に食品添加物(緑茶抽出物、アミノ酸等)が添加されているかないかで区分


=== テストしたのは… ===

静岡市内で市販されていた容器入り緑茶飲料17銘柄です(1)。カテキンが増量された旨の表示のあるもの(以下、増量タイプ)は11銘柄でした。

◆ カテキンが増量された旨の表示

「カテキン○○mg」と具体的に表示(9銘柄)の他、「従来比○○%のカテキン(当社比)」、「濃カテキン配合」等とありました。

カテキン増量の方法としては、茶葉のみによるもの(5銘柄)と、茶葉の他に茶抽出物が添加されているもの(6銘柄)の2つがありました。

◆ 保存方法(開栓前)

「直射日光や高温多湿を避ける」(6銘柄)、「直射日光を避ける」(4銘柄)、「高温・直射日光を避ける」(4銘柄)、「要冷蔵」(紙パック1銘柄)となっており、記載なしも2銘柄ありました。

◆ 開栓後の取扱い

「すぐに飲む」(14銘柄)他、「できるだけ早めに飲む」、「冷蔵庫に保管し、早めに飲む」、「すみやかに飲む」(各1銘柄)とすべてに表示がありました。

◆ 原料茶の産地

8銘柄に「国産」とのみ記載されていました。

平成169月のJAS法の加工食品品質表示基準改正により、茶葉には「原料原産地名」の表示が義務づけられましたが、緑茶飲料については表示義務が見送られ、任意となっています。

◆ トクホの緑茶飲料

特定保健用食品(トクホ)とは、生活習慣病のリスクの低減・除去に役立つように工夫した食品で、厚生労働省の許可を必要とします。今回の調査では1銘柄ありました。

テキスト ボックス: 表2 各カテキン類の含有量(単位:μg/ml)
カテキン類	増  量注)	増 量 な し注)
EC	54.6±38.9	(18.0〜123.0)	24.6± 5.5	(19.0〜33.8)
EGC	139.3±104.4	(38.6〜329.4)	66.7±12.2	(52.3〜84.2)
EGCg	144.0± 90.5	(8.4 〜309.2)	74.7± 3.5	(71.4〜80.4)
ECg	37.5±27.6	(0.0〜93.5)	15.3± 1.8	(13.2〜18.7)
C	63.2±47.2	(27.2〜176.3)	36.8± 5.3	(30.9〜42.9)
GC	173.4±113.9	(78.5〜399.9)	108.7± 14.3	(90.1 〜133.0)
GCg	129.5± 91.9	(0.0 〜333.3)	76.4± 5.6	(70.2〜85.3)
Cg	31.0±23.6	(0.0〜74.9)	17.1± 2.3	(14.3〜20.3)
総カテキン量	772.5±389.5	(326.6〜1517.0)	420.5± 39.7	(364.8〜479.5)
注)値は、平均値±標準偏差(最小値〜最大値)

表3 各カテキン類の含有割合(単位:重量%)
カテキン類	増  量注)	増 量 な し注)
EC	6.7 ± 2.4	(3.0 〜10.6)	5.8 ± 0.9	(5.1 〜 7.6)
EGC	17.0± 7.4	(5.7 〜32.3)	15.8± 1.8	(13.9〜18.8)
EGCg	19.0± 6.7	(0.9 〜25.3)	17.9± 1.0	(16.8〜19.6)
ECg	4.8 ± 2.2	(0.0 〜 9.1)	3.6 ± 0.1	(3.5 〜 3.9)
C	8.1 ± 4.0	(4.0 〜19.3)	8.7 ± 0.8	(7.7 〜10.1)
GC	22.5± 8.6	(11.5〜43.7)	25.8± 1.2	(24.7〜27.7)
GCg	17.8± 8.8	(0.0 〜32.7)	18.3± 2.0	(15.7〜20.9)
 Cg	4.3 ± 2.6	(0.0 〜10.4)	4.1 ± 0.5	(3.2 〜 4.8)
注)値は、平均値±標準偏差(最小値〜最大値)
●カテキンの含有量は?

 緑茶のカテキン類は、いくつかのポリフェノール化合物の総称で、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、エピカテキンガレート(ECg)の4種が主に含まれ(主要カテキン類)、これら主要カテキン類のエピ体(立体異性体の1つ)であるカテキン(C)、ガロカテキン (GC)、ガロカテキンガレート(GCg)、カテキンガレート(Cg)も少量含まれています。



2は、増量群(11銘柄)と増量なし群(6銘柄)に分けて比較した結果です。急須の緑茶は主要カテキン類がほとんどですが、緑茶飲料にはGC及びGCgをはじめとする主要カテキン類のエピ体が全体の半分以上(55%)含まれていました。また、増量群は標準偏差(銘柄間のばらつき)が大きく、総カテキン量において増量なし群の平均値420μg/mlを下回った増量群が2銘柄ありました。

3総カテキン量に対する各カテキン類の含有割合を示しました。全銘柄に共通してピロガロール基を有するEGCEGCgGCGCgの含有割合が高く、中でもGCの割合が最も高いものは12銘柄ありました。なお、カテキン増量のタイプとしては、緑茶抽出物等を添加したもの(添加群、 6銘柄)と茶葉のみで増量したもの(添加なし群、5銘柄)がありますが、今回の調査ではカテキン類の組成においてこれらの間に明確な違いがあるとはいえませんでした。


        開栓前の緑茶飲料は冷蔵庫に入れなくて大丈夫?

 今回テストした緑茶飲料には、カテキン含有量が明記されたものが9銘柄ありますが、保管中にカテキン量は変化しないのでしょうか。また、開栓前の保管方法は「室温保存」と表示されていることが多いのですが、冷蔵庫で保管しなくてもよいのでしょうか。そこで、未開栓、賞味期限内のペットボトル及び缶入り緑茶飲料を冷蔵庫内、室温で遮光した場合(遮光室内)、室温で日光のあたる場合(日光室内)の3つの条件下で、3ヶ月間保管した後のカテキン含有量を調べてみました。

冷蔵庫内保管の含有量を1とした場合の比較(1)では、日光室内保管でECg及びCgを除くカテキン類に若干減少する傾向がみられたものの、各カテキン類の含有量はほとんど変化がなく、かつ銘柄間のばらつきも小さいという結果でした。このことから、ペットボトル等の容器入り緑茶飲料の保管は常温で十分ですが、可能なら暗所に置くことが望ましいと考えられます。


☆ その他の化学成分についても調べてみました。

● 遊離アミノ酸

テアニンをはじめとする遊離アミノ酸の含有量を調べてみました(4)。銘柄間の差が非常に大きく、特にアスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニンでその傾向が顕著でした。これは、アミノ酸や緑茶抽出物等の食品添加物が添加され、特定のアミノ酸が強化された銘柄が多いためであると考えられました。


       ビタミンC

 ビタミンCは、各種茶の中で緑茶特有のものといってよく、発酵させた紅茶には全く含まれず、半発酵のウーロン茶にもわずかに含まれているのみです。栄養機能としては、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を有することが挙げられます。なお、緑茶飲料には茶葉自体に由来するビタミンCのほかに、食品添加物(酸化防止剤)として添加されています。

5に結果の概要を示しました。原材料名にビタミンCの表示がないものが1銘柄ありましたが、含有量は平均値の4%程度であり、茶葉由来のビタミンCもほとんどが消失しているものと考えられました。


4 遊離アミノ酸含有量(単位:μg/ml

平均値±標準偏差(最小値〜最大値)

アスパラギン酸

18.2±27.9

5.1 122.0

グルタミン酸

23.8±27.4

3.3 99.2

アスパラギン

3.2±1.8

0.8 9.1

セリン

3.6±2.3

1.2 9.1

グルタミン

7.8±6.1

2.1 25.0

アルギニン

15.9±42.3

 1.8 178.5

テアニン

94.0±53.0

35.4 153.0

γ−アミノ酪酸

0.7±0.4

0.3 1.1

総アミノ酸量

167.2±109.6

52.8 426.0

       ナトリウム

 5に結果の概要を示しました。ビタミンC無添加の1銘柄を除き512mg100mlであり、この値は通常の水道水のナトリウム濃度(約1mg100ml)より高い値でした。理由は、緑茶飲料に酸化防止剤としてビタミンCを添加する際、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を添加している(ただし飲料中にはこの形で残存しないので食品添加物としての表示不要)ためではないかと考えられました。なお、これら飲料1本分のナトリウム量は60mg以下であり、1日の食塩摂取量に影響を与える量ではありません。

5 各成分の含有量

平均値±標準偏差(最小値〜最大値)

総ビタミンC

(μgml

269.6±123.3

11.0538.0

ナトリウム

(mg/100ml)

8.3±2.9

0.311.6

カフェイン

(μgml

184.4±87.4

102.9458.0

          カフェイン

カフェインは、覚醒、強心及び利尿作用等の効果がありますが、過剰摂取(1530mgkg体重)の場合には、強い不眠、心悸亢進、けいれん等を起こすことがあります。

テキスト ボックス: 表6 カフェインの含有量(μg/ml)
	平均値±標準偏差(最小値〜最大値)
増 量	216.8±100.9	(102.9〜458.0)
増量なし	145.0±19.1	(126.1〜178.0)
5に結果の概要を示しました。平均値(184μgml)は500mlのペットボトル1本分では92mgであり、コーヒー1杯分(85mg1カップ)よりやや多い量でした。また、カテキン増量群では含有量が多い傾向がみられ(6)、特に最大値の458μgmlは、1本分(350ml)に換算すると160mgとなり、体重10kgの子供では過剰摂取となります。さらに、疾患で服薬中の人や妊婦等は、健常者よりカフェインが血漿中に長く残存する恐れがあるため、これらの飲料を利用する際は注意が必要です。

■□■ まとめ □■□

1 緑茶飲料のカテキン類の組成は、急須で入れる緑茶と異なり、主要カテキン類のエピ体(CGCGCgCg)が全体の半分以上を占めていました。またこの違いは、緑茶飲料の製造工程における加熱殺菌によるものと考えられます。

2 未開栓及び賞味期限内の緑茶飲料の保管は、表示にあるように常温で十分ですが、心配であれば暗所に置くのがよいでしょう。

3 アミノ酸や緑茶抽出物等の食品添加物が添加された緑茶飲料では、特定のアミノ酸が強化されており、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニンでその傾向が顕著でした。

4 緑茶飲料の多くは、ナトリウムの含有量が通常の水道水より多めでしたが、これは緑茶飲料にビタミンCを添加する際、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤も添加されている(表示不要)ためだと考えられました。

5 カテキン増量タイプの緑茶飲料は、通常の緑茶飲料よりカテキンの含有量がおおむね多くなっていますが、カフェインの含有量も多いものがあるので、服薬中の人や幼児、妊婦は飲みすぎに注意しましょう。

メーカーへの要望

 カテキンを増量した旨の表示は法律上の強調表示にはあたりませんが、この旨を表示する場合には消費者に誤解を与えないためにも「カテキン○○mg」と含有量を具体的に記載することが望まれます(すでに表示してある銘柄も多くみられます)。



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