静岡県環境衛生科学研究所

No.120


商品テスト情報

−園芸用育苗培土−


園芸店やホームセンター等では袋から出してすぐに使える培養土(肥料用語では「園芸用育苗培土」といいます。)が多く販売されています。このような土は、花専用など用途が決められたもの、肥料や根腐れ防止剤が加えられたもの、酸度が調整されたもの等、実にさまざまな種類がありますが、どの土を選んだらよいのか迷ってしまう場合も少なくないと思います。そこで、これら園芸用育苗培土の物理特性及び化学特性等をテストしてみました。

=== テストしたのは…== 
  静岡市内で市販されている、園芸用育苗培土15銘柄で、用途別及び単位価格別に分類すると1のようになっていました。 また、袋の中の土の容量は、商品に表示された「充填時容量」より多かったものが11銘柄、少なかったものが4銘柄(最大誤差-8.5%)でした。

1 調査対象

分 類

銘柄数

用途

植物全般用

10

花 用

4

種まき用

1

単位価格

1120(円/L

3

2130(円/L

5

3140(円/L

2

4150(円/L

2

5160(円/L

1

6180(円/L

2


植物の生育に
 必要な5要素

りん酸
花を咲かせ、実を太らせる

窒素
葉や茎を育てる

マグネシウム(苦土)
葉緑素をつくる

注) 本文中では、「植物が利用できる」という意味で「窒素、りん酸、石灰、苦土、カリ」を、「無機態窒素、可給態りん酸、交換性石灰、交換性苦土、交換性カリ」と呼んでいます。

カルシウム
 (石灰)
酸性の土を中和する

カリウム(カリ)
   根を育てる


      土の化学特性等を調べてみました。


  表2
に結果を示しました。pHはいずれの銘柄も微酸性〜中性の範囲内でした。また、EC(電気伝導度)が最も低いのは種まき用の土でした。水分量は1銘柄を除き3253重量%で、他の1銘柄は25重量%と非常に低く、軽い土でした。5要素(無機態窒素、可給態りん酸、交換性石灰・苦土・カリ)の含量については2に示すとおりです。なお、標準偏差とは、銘柄間のばらつきのことです。

     H
 土の酸性、アルカリ性の度合いを示し、pH7が中性でそれより数値が小さくなるほど酸性が強く、大きくなるほどアルカリ性が強くなります。

◆ EC(電気伝導度)
 土の中に肥料分が多いか少ないかの目安となり、ECが高いと肥料分が多いことを示します。

    コマツナを用いて土の発芽性・生育性を調べてみました。

お店に並んでいる園芸用の土は、植物の生育に適した土かどうか、見ただけではなかなかわからないものです。そこで、肥料等の登録の際に法律で義務付けられている試験法に基づいて、テストの土で実際に植物(コマツナ)を育ててみました。
  結果の概要を3に示しました。ここで、発芽性は発芽率(コマツナの種を25粒蒔いた時の発芽割合(%))を、生育性は、種まき後21日目の葉長(cm)及び生体重(地上部を収穫した時の重量(g/鉢))を表しています。発芽性の良否は土の通気性や水はけが、また生育試験の良否は肥料分が左右しています。さらに、過剰な肥料分があると発芽時に根や芽を傷めるため、発芽率を低下させる要因ともなります。
  種まき後21日目では平均発芽率が88%と良好な結果でしたが、中には70%を下回る土が2銘柄ありました。また、生育性では生体重で銘柄差が大きく、最大値と最小値では16倍以上の差がありました。

2 化学特性及び物理特性

平均値±標準偏差

最小値

最大値

pH

6.6±0.2

6.1

6.9

EC

mS/cm

1.30±0.97

0.23

4.08

水分

(重量%)

40.2± 7.7

24.5

52.7

無機態窒素(mg/100g

23.7±27.7

1.3

88.6

可給態りん酸mg/100g

18.9±15.8

2.2

63.3

交換性石灰(me/100g

24.0± 6.8

14.6

36.1

交換性苦土(me/100g

6.9±2.7

3.7

13.2

交換性カリ(me/100g

7.7±4.0

1.6

17.7

3 コマツナの発芽性及び生育性

平均値±標準偏差

最小値

最大値

発 芽 性

4日目(%)

72±19

34

94

11日目(%)

87±12

60

98

21日目(%)

88±12

60

100

生育性

葉長(cm

3.4±1.6

0.8

6.0

生体重(g/鉢)

9.3±6.4

1.3

21.2

4 コマツナ生育試験における異常症状の有無と無機態窒素含量(mg/100g

平均値±標準偏差

最小値

最大値

異常症状あり

5.7±5.6

1.3

16.4

異常症状なし

39.4±30.3

7.8

88.6

5 アサガオの生育性

平均値±標準偏差

最小値

最大値

開花数

5±4

0

15

花径(cm

6.8±3.0

0.0

9.0

つるの長さ(cm

115± 80

11

268

葉長(cm

7.3±2.2

3.6

10.3

葉 数

15± 9

3

32

6 発芽性・生育性の分類

コマツナ

アサガオ生育性注)

銘柄数

発芽性注)

生育性注)

4

×

1

×

×

3

×

×

1

×

×

1

×

×

×

1

評価困難

4

注)○ 良好、× 悪い

さらに、葉の生育遅延など異常症状のあった土(7銘柄)とそうでない土(8銘柄)に分けて無機態窒素含量を比較したのが4ですが、異常症状のあったものは無機態窒素含量が低い傾向にありました。

● アサガオを育ててみました。

 テストの土を用いてアサガオを栽培し、種まき後67日間の開花数と花径(cm)、及び67日目のつるの長さ(cm)、葉長(cm)、葉数を調べました。5からわかるように、土により生育の違いが大きくあらわれました。なお、花が全く咲かなかった土も2銘柄あり、開花数とつるの長さ及び葉数には高い相関がありました。

●コマツナとアサガオの結果から・・・

上記のコマツナの発芽性・生育性とアサガオの生育性の結果をまとめてみました(6)。ここで○×は、3及び5の平均値より良いか悪いかで判定し、複数の項目の評価がそれぞれ異なり判定できない場合は「評価困難」としました。
  コマツナの発芽性が良好で生育性(コマツナ、アサガオ)が悪い3銘柄(うち1銘柄は種まき用の土)は、表にはありませんが、無機態窒素含量が低くなっていました。また単位価格が20(円/L)以下と廉価な土(13銘柄)は、いずれも6において×が2個以上の群に属していました。
  そこで、6における分類をもとに5要素含量を比較してみました(7)。「良い」群は他の「悪い」及び「評価困難」と比較して、おおむね5要素含量が多い傾向にあり、肥料分の多少が植物体の生長に与える影響は大きいものと考えられました。


表7 発芽性・生育性の結果で比較した5要素含量(値は平均値±標準偏差(最小値〜最大値))

良い注)5銘柄)

悪い注)6銘柄)

評価困難注)4銘柄)

無機態窒素(mg/100g

39.8±35.7

7.8 88.6

15.0±25.5

1.3 65.8

16.7±11.9

6.1 33.0

可給態りん酸(mg/100g

31.2±20.4

7.5 63.3

9.9±6.6

2.2 17.4

17.0±10.5

2.9 28.4

交換性石灰(me/100g

26.4± 8.3

17.436.1

22.2± 6.5

14.629.8

23.6± 6.1

18.532.0

交換性苦土(me/100g

7.9±2.6

5.3 11.2

5.1±1.3

3.76.6

8.3±3.5

5.6 13.2

交換性カリ(me/100g

8.6±5.9

2.5 17.7

6.8±3.6

1.6 12.5

7.9±2.3

5.6 10.0

 注)6において○が2個以上の銘柄を「良い」、×が2個以上の銘柄を「悪い」、それ以外を「評価困難」としました。


■□■ まとめ □■□

1 今回テストしたすべての土は微酸性〜中性なので、一般植物の用途であればpHの調整は不要と考えられました。

2 今回のテストでは、単位価格が20円/L以下と廉価な土は、植物の発芽及び生育がよくありませんでした。あまり安い土は避けた方が無難です。

3 今回テストした「種まき用の土」は、発芽性は良いが生育性が悪く、また肥料分も少ないという特徴がありました。用途が限定されている土は、その土の特性をよく理解した上で購入しましょう。

園芸用の土を購入するときのポイント

1     購入する土が「pH調整済み」の表示があるかを確認しましょう。表示のない土はpHを調整する(石灰資材を加える等)必要のある場合があります。

2     適用植物または用途が明記されている土を選びましょう。

3     肥料が加えられているかどうか、確認しましょう。

4     袋の透明部分からみて、土が団粒構造(土の微塵が集まって小さな団子のようになったものの集まり)を成しているかを確認しましょう。あまり微塵の多い土は通気性や水はけ等が悪いおそれがあります。

5     袋に「@適用植物名または用途、A充填時の容量、B主な配合原料名、C肥料の配合の有無、D製造業者または販売会社名、住所、電話番号」の表示がある土は、家庭園芸肥料・用土協議会に登録されているメーカーが製造した土です。

袋の裏の表示を

よく確認

しましょう!



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