静岡県環境衛生科学研究所

No.122


商品テスト情報

− 防犯ブザー −


 

近年、子供や女性を狙った傷害事件が相次いで起こり、社会的な関心を呼んでいます。これらの犯罪による被害を防ぐために色々と対策が検討されていますが、対策の一つの道具として、大音量を発することで周囲に身の危険などを知らせる「防犯ブザー」を持つ人が増えています。しかし、実際に持ってはみたものの、「いざという時に役に立つのか?」、「周囲の人が本当に助けに来てくれるのだろうか?」といった不安を感じている人も多いのではないでしょうか?


♪ そこでまず、アンケート調査をしました。

静岡県消費生活モニター107名、静岡県職員1,369名の、合計1,476名から回答を得ました(以下はその一部です)。

 防犯ブザーを持っている人の割合は、回答者本人で7.2%、回答者の家族で12.2%でした(図1。また、回答者本人が防犯ブザーを持っていない理由としては、「持つ必要がない」(68.7%)、「存在自体知らなかった」(6.0%)などでした。

 回答者等が持っている防犯ブザーは、「購入したもの」(54.0%)や「地域で配布された」(35.5%)ものが多く、大半の人が「バッグやランドセルなどにつけて」携帯していました。

 使用中の不具合で多かったものは、「不用意に鳴ってしまった」(26.4%)、「(形状が)扱いにくい」(21.5%)、「本体が落ちやすい、本体を落としやすい」(11.3%)などでした。


 地域での防犯に関する取組みについては、図2のとおりでした。

その他、「どの程度役に立つのかわからない」といった効果に対する疑問や、「いざという時使えるか」、「鳴らしても周囲の人は助けに来てくれるか」などの不安、そして「子供がいたずらで鳴らしてしまう」、「(防犯ブザーそのものが)どんなものかわからない」といった意見もありました。

それでは、防犯ブザーの音色や使い勝手はどのようなものでしょうか?また、防犯ブザーの音がどのくらい聞き手側に認知されているのでしょうか?

そこで、静岡県内で売られていた8銘柄の防犯ブザーを使って、実際にテストしました

♪ まずは、表示を見てみましょう。

防犯ブザーには、これといって決まった表示の方法はありません。例えば、音量の表示一つをとっても、単に「約○○dB」と書いてあるものと「○○dB(前方1m)」と書いてあるものがありました。一方、音量の測定方法についてもメーカー間で統一されておらず、表示の数字だけでは実際の音の大きさを比較できないことがあります。

 その他、原産国、音量、本体の材質、電池の寿命及びその交換時期など、必要と思われる項目の表示がなかった銘柄がありました。これらについても、商品を選ぶ時の目安になりますので、購入時に必要な項目について表示されることが望ましいと思われます。


♪ 音量や音色は、銘柄によってどのように違うのでしょうか?

音の高さはどの銘柄でもあまり変わらず、比較的高い音でした(図3)。1.04.0kHz付近が人間の耳にとってはっきりと聞き取りやすい音なので、今回テストした防犯ブザーにこの範囲の音が使われていました。

音の大きさはどの銘柄も大きく、1m離れたところで測定した場合90100dB(A)でした。これは電車が通る時のガード下での音の大きさとほぼ同じ大きさです。

また、音色については、銘柄によってまちまちでした

♪機器の使い勝手は?また、不具合にはどのようなものがあるのでしょうか?

20代〜50代の女性モニター16名に、実際に防犯ブザーを交代で携帯して動作確認及び電池交換のテストを行ってもらい、その使い勝手と不具合について答えてもらいました。

携帯中、携帯者の意図なしにピンが抜けてしまい(あるいはボタンが押されてしまい)、防犯ブザーが勝手に鳴ってしまった銘柄がありました。音のインパクトについても、「あまり強くない」と感じた銘柄もあったようです。

また、今回テストした防犯ブザーには、ボタン電池を使うもの(3銘柄)と乾電池を使うもの(5銘柄)がありましたが、特にボタン電池の交換についてはどの銘柄でも多くのモニターがかなり手間取っていました。

そして、最後にテストした銘柄について使い勝手の良い防犯ブザーをあげてもらったところ、小柄で薄いものや、乾電池使用の比較的電池の交換しやすいものが評価の高い結果となりました。

♪ 本来助ける側になる聞き手が、防犯ブザーの音を認知できるのでしょうか?

  20代〜50代の一般男女53名のモニターに、防犯ブザー3種類を含む12種類の音を聴いてもらい、それぞれが何の音であるかを答えてもらいました。
  結果を図4に示しましたが、防犯ブザーを除く9種類の音についての正答率は80%以上でした。特に「電車の通過音」や「救急車のサイレン」などは、モニター全員が正答しました。
  一方、3種類の防犯ブザーの音については、どれも正答率が25%未満であり、そのうちの1つ(A)の正答率は1.9%と、大変低い結果となりました。
また、防犯ブザーの誤答の内容について見てみると、「おもちゃの音」、「携帯電話の着信音」、「目覚まし時計の音」、「虫の声」などがあり、日常生活の中にある音と区別がつかなかったようです。また、何の音か答えられなかったモニターも多くいました。


☆★☆ テスト結果のまとめ ☆★☆

1 音量や音色は、銘柄によってまちまちでした。

2 不用意に鳴ってしまったり、電池交換がしにくい銘柄がありました。

3 防犯ブザーの音が聞き手にあまり認知されていないことがわかりました。


  ■□■ 防犯ブザーのことをもっと知るために ■□■ 

◆ 防犯ブザーを買う時&使う時は…

・ 防犯ブザーはホームセンターや家電量販店でも売られています。自分の欲しい機能がある場合には、機能を確かめながら買うことのできるお店に行って、実際に比べながら買うと良いでしょう。
・ 買った後は、防犯ブザーが正常に作動することを定期的に確かめましょう。
・ 持ち歩く際は、すぐに取り出せるところに身に付けましょう。(最近のランドセルの中には、背負った際に胸の位置に来るように、ベルト部分に防犯ブザーを取り付けられるようになっているものもあります。)


◆ 防犯ブザーの性能や音色を知り、地域で広めていきましょう。

・ 防犯ブザーは、聞き手側に音をはっきりと認知させ、使用者の身に危険が迫っていることを知らせるためのものです。そのために、防犯ブザーを携帯及び使用する人だけでなく、音の聞き手である地域のみなさんにも防犯ブザーの性能や音色を知ってもらいましょう。
 そこで、防犯組織などで防犯ブザーの実音を聞かせる「実音デモ」を行ったりすることによって、防犯ブザーの音色を幅広く伝え、地域の安全を図ることが大切であると思われます。




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