静岡県環境衛生科学研究所

No.124


商品テスト情報

ルチンを含むそば加工品−


 そばは、タデ科ソバ属に分類される植物の種子を食用として用いるようになったもので、江戸時代中期にそば切り(麺)が庶民に普及し始め、食物繊維が豊富でポリフェノールの1種であるルチンを含むこ とから、その栄養機能が注目を集めています。また、中国やモンゴル等の山岳地帯で収穫されるダッタンそば(苦そば)は、普通そば(甘そば)に比べルチンをはるかに多く含むといわれ、健康食品としての需要が伸びています。そこで、市販のそば加工品の機能性等を調べてみました。

=== テストしたのは… ===

静岡市内で市販されていたそば加工品19銘柄です(表1)。

◆ そば茶(清涼飲料水)
 主原材料は、そばの実またはダッタンそばの実で、すべてビタミンC(酸化防止剤)が添加されていました。茶葉や酵素処理ルチンを含む商品もありました。
◆ そば茶
 ダッタンそばの実が原材料で、原産国は中国(2銘柄)及び日本(1銘柄)となっていました(記載なし1銘柄)。
◆ ダッタンそば
 かつてシベリア東部に多く住んでいた韃靼人が好んで食べたことに由来しています。中央アジアやインド北部、国山岳地帯等で多く栽培され、苦味があることから別名「苦

そば」とも呼ばれています。ルチン、ビタミン、ミネラル等を多く含む食品として近年注目されており、日本の気候に合った品種の開発も進められています。
◆ そばのそば粉配合割合は?
 「十割そば」、「二八そば」、「八割そば」のように、商品名から表示上のそば粉の割合がわかるものもあります。また原材料名の記載順(割合の多いものから記載)から、そば粉と小麦粉のどちらが多いかを知ることができます。
◆ そばの栄養
 そばは栄養価の高い食品で、良質なたんぱく質やビタミンB群が他の穀物に比べて多く含まれています。また、カロリーが控えめで食物繊維を多く含むので、健康食として見直されています。
◆ ルチン
 そばの実の殻及びダッタンそばに多く含まれるポリフェノールで、毛細血管の強化、血圧降下作用等の働きがあるとされています。また、そばに含まれる代表的な抗酸化物質です。
◆ そばアレルギーについて
 そばを含む食品の摂取によって、かなり深刻なアレルギーを起こすことがあり、食品衛生法施行規則でそばの特定原材料表示が義務付けられています。今回調査の商品は、原材料としてそばが表示されていることは言うまでもありませんが、16銘柄にそばアレルギーの人に対する注意喚起が記載されていました。
●そば加工品のルチン

ルチンは、そばの機能性成分として知られており、血管壁の強化や高血圧予防、抗酸化、血流改善等の効果が認められています。また、この成分は可食植物の中ではそばだけに含まれているものです。
 2に調査した商品のルチン含有量を示しました。ルチンは、そば茶及びダッタンそばに非常に多く含まれており、そば茶は普通そばに比べ平均で81倍、ダッタンそばは44倍の含有量となっていました。また、普通そばはそば粉に比べ平均で2分の1程度でした。なお、ルチンの過剰摂取について、LD50(半数致死量)がマウスで体重1kgあたり950mgとの報告がありますが、常識をはるかに超える量のそばを一度に摂取しない限り、弊害はないと考えられます。

●そば加工品はどのくらいの抗酸化作用があるのでしょうか?

生体内における酸化ストレスにより発生する活性酸素は、体内で細胞や血管を傷つけ、ガンや動脈硬化等の生活習慣病や老化の原因に関与しているといわれています。この活性酸素を除去・捕捉する抗酸化作用を有し、増加を抑制するとして近年注目されているのが、私たちが普段利用している食品に含まれるビタミンCやビタミンE、ポリフェノール等の機能性成分です。
 抗酸化作用を評価する方法はいくつかありますが、ここでは活性酸素の1つであるラジカルを消去する度合いを示す「DPPHラジカル捕捉活性」の大きさを測定しました(表3)。
なお、ラジカル捕捉活性の強さの目安としては、表4に示すとおりです。
  ラジカル捕捉活性が最も高いのはそば茶で、次いでダッタンそば、そば粉の順となっておりこれらの抗酸化作用は非常に強いものでした。また、そば茶は平均で普通そばの8.7倍、ダッタンそばは4.3倍の活性を有していました。


● そばをゆでた場合は?
 

これらそば加工品は、調理によってルチン含有量や抗酸化作用がどのように変化するのでしょうか?
  まず、そばをゆでた場合の変化を調べてみました(図1)。なお、調理は沸騰した湯750mlにダッタンそば(乾麺)を50g入れ、2分間ゆでた後、ざるに上げて行いました。

4

ルチンについては、乾麺の約半量がゆでそばに残存していますが、そば湯にも37%移行しており、損失は14%でした。そばを食べた後にそば湯を飲用すれば、より多くのルチンを摂取できると考えられます。また、ラジカル捕捉活性については、ゆでそばは乾麺の75%、そば湯は2割程度となっていました。  

● そば茶を煎じた場合は?

 次に、そば茶を熱水及び冷水で抽出した場合について検討してみました(図2)。抽出方法は商品の記載に従い、熱水抽出については沸騰した湯500mlにティ−バッグのそば茶(約5g)を入れ5分間煮沸し、冷水抽出については5℃の水500mlに同様のそば茶を3時間浸漬したものです。
 熱水抽出では原料のルチンの約7割が、冷水抽出では約4割が溶出しており、熱水抽出の方がより多くのルチンを摂取できることがわかりました。また、ラジカル捕捉活性についても熱水抽出の方がやや高くなっていました。



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