静岡県環境衛生科学研究所

No.126


商品テスト情報

− 自動販売機で量り売りされる水 −


 

近年、おいしい水や安全な水を求める声の高まりから、繰り返し使用できる容器にセルフサービスで水を入れて持ち帰るといった、水の量り売りを行う自動販売機を設置したスーパー・マーケットが増え、利用する人も多くみられます。しかし、自動販売機の水(以下、「自販水」と略す)の多くは、殺菌作用のある残留塩素が除去されています。そして、これらの水は、使い切るまでに数日間かかることもあり、保管方法も人によって様々なようです。
では、水を衛生的に保管・利用するためには、どのようにしたらよいのでしょうか。今回、自販水とその原水となる水道水の成分の違いや、衛生的に自販水を保管するための留意点について調べてみました。

     === テストしたのは… ===

自動販売機の水は、静岡市内のスーパー・マーケットで供給されていた以下の12銘柄です。

  ・逆浸透膜ろ過水(以下、「RO水」と略す)
                 5銘柄

  ・アルカリイオン           2銘柄
  ・麦飯石ろ過水             2銘柄
  ・電子イオン水             2銘柄
  ・ミネラルイオン水         1銘柄

        
角丸四角形: ◆ 残留塩素
水道水の浄化過程で、消毒のために加えられた塩素が残留したものです。残留塩素には、遊離残留塩素(次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン)と結合残留塩素(クロラミン注))とがあり、水道法で、水道水の給水末端(蛇口)の残留塩素濃度が定められています。(遊離残留塩素:0.1 mg/L以上、結合残留塩素:0.4 mg/L以上)
注)水中で、塩素と窒素化合物(アンモニアや尿素など)の反応により生成する物質です。
◆ カルキ臭
水道水のカルキ臭の主な原因は、クロラミンの1つであるトリクロラミン(三塩化窒素)です。したがって、カルキ臭は、塩素そのものの臭いというわけではありません。
◆ 一般生菌数
標準寒天培地により集落を形成するすべての細菌の数を指し、これらの細菌は、必ずしも病原性のものではありません。水の汚染程度を示す一指標となり、水道法で100 CFU/mL注)以下と規定されています。
注)CFU(コロニー(集落)形成単位(Colony Forming Unit)の略)は、微生物の表示単位の1つです。

● 自販水の性状について調べてみました



 自販水は、表1に示した処理により
、水道水から生成されます。その成分は水道水と比べてどのように違うのでしょうか。各自販水の結果(代表値)を図1に示しました。
 今回の調査では、自販水は、原水となる水道水と比較して軟水化したものが3種類(8銘柄)、大きな変化がみられなかったものが2種類(4銘柄)でした。また、自販水の性状は、表示されている水の処理方法に対して適正なものでした。なお、残留塩素は1銘柄を除き、検出されませんでした。





● 自販水中の細菌について調べてみました


☆ 自販水の衛生状態はどうでしょうか?


 自販水の多くは、残留塩素が除去されていたので、その衛生状態を調べるため、これらの水を滅菌及び新品の容器で4℃及び30℃でそれぞれ保存し、一般生菌数を測定しました。その結果、採水直後から28日経過後まで全期間をとおして生菌数は30CFU/mL未満でした。このことから、自販水の衛生状態は清浄であることが確認されました。



☆ 繰り返し使用した容器を使うと水中の一般生菌数はどうなるのでしょうか?

  通常、容器は繰り返し使用されています。そこで、自販水を1年半から2年程前から使用している容器に入れた場合の一般生菌数を測定し、新品容器の場合と比べてみました。4℃で保存した場合は全期間を通して生菌数は30CFU/mL未満でしたが、30℃で保存した場合には図2のとおり、2検体で採水直後に細菌が確認されました。また、1日経過後に、一般生菌数が水道法の水質基準100CFU/mLを上回ったものもあり、その後も細菌は増殖しました注)。実際には、水を消費し切るまでに容器を何度も開け閉めするため、細菌が入り易い状態になることが考えられますから、そのような場合にはより注意が必要でしょう。
 細菌が増殖したか見た目ではわかりにくいかもしれませんが、衛生的に飲用するため、冷蔵庫で保存し、なるべく早めに使い切ることが望まれました。

 注)一般生菌数は病原性の有無に関わらず測定されます。  したがって水質基準を超えたものが直ちに人体に有害と  いうわけではありません。
☆ 容器に付着した細菌を取り除くためには?

では、どのような容器の洗浄方法が除菌に効果的でしょうか。
 今回調査した銘柄では、具体的な洗浄方法が表示されているものは少なく、その方法は個人の判断に委ねられていました。そこで、表2のように、容器を3種類の方法で洗浄し、洗浄前及び洗浄後に一般生菌数を測定しました。その結果、図3のように短時間の水道水、又は湯での洗浄では不十分でしたが、台所用漂白剤で洗浄した場合には十分に除菌されることがわかりました。

テキスト ボックス:   

■□■ まとめ □■□
角丸四角形: 1 自販水に含まれている成分やpHについては、水道水と比べて軟水化したものやアルカリ性になったもの、特に変化はなかったものなど様々でした。しかし、それらは概ね自販水の生成方法に合った性質でした。
角丸四角形: 2 一般生菌数の測定から、今回調査した自販水の
衛生状態は清浄であることが確認されました。
角丸四角形: 3 多くの自販水は、殺菌作用のある残留塩素が除去されていました。また、繰り返し使用した容器は、使用状況により給水前の容器自体に細菌が付着していることがあり、30℃保存では、1日経過後に飲用不適となったものもありました。したがって、繰り返し使用した容器を用いる場合には取扱いに注意し、水を冷蔵保存し、なるべく早めに使い切ることが望まれました。

角丸四角形: 4 容器に付着している細菌を除去するためには、
台所用漂白剤で洗浄することが効果的でした。しかし、短時間の水道水や湯での洗浄は不十分でした。
。


角丸四角形: 5 販売店は、具体的な洗浄方法を表示するなどして、更に消費者に適切な自己管理を促すことが望まれました。




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