静岡県環境衛生科学研究所

No.127


商品テスト情報

− 自転車用補助錠 −


自転車は、身近で手軽な移動手段として、多くの人に利用されています。しかし、その盗難は例年多く発生し、少年犯罪や放置自転車増加の一因となっています。現在、自転車盗難を防ぐために、様々な対策が検討され、その1つとして施錠があります。しかし、施錠していても盗難に遭うケースもあることから、ワンロック(1個の錠で施錠すること)では不十分な場合もあり、補助錠を利用している人が増えています。
 
しかし、どのようなタイプの補助錠を選んだらよいのか迷うことも少なくないと思います。そこで、補助錠について、性能や、盗難防止に効果的な使用法を調べてみました。

  

     

● まず、アンケート調査をしました


県内の高校2年生(283名)及び静岡県職員2,785名の、合計3,068名から回答を得ました(以下はその一部です)。

 駐輪時の施錠状況
 施錠している人は96.3%であり、そのうち、ツーロック(2個の錠で施錠すること)をしている人は17.8%でした。しかし、短時間の駐輪では、普段ツーロックしている人でも半数以上はワンロックでした。また、施錠している人のうち、駐輪場の設備に、補助錠等で自転車を固定している人は8.8%でした。 
 盗難状況
 盗難に遭ったことがある人は40.9%でした(図1)。そのうち有施錠にも関わらず被害に遭った人は67.9%であり、その9割以上は、ワンロックでした。
盗難に遭った場所は、「駅等の駐輪場」(45.7%)と最も多くの人が答えましたが、比較的短時間の駐輪と予想される「商店の駐輪場」(13.0%)と答えた人もいました。
 使用上、不都合な点について
 錠を使用するのに不都合に感じたことがある人は53.7%で、なかには「錠が錆びて使えなくなった」(13.3%)や、「錠が弱くて壊れて(壊されて)しまった」(7.4%)など、錠にとって不可欠な性能に関する問題もあることがわかりました(図2)。

       

=== テストしたのは… ===


 それでは、市販されている補助錠の性能は、これらの錠の種類によって違いがあるのでしょうか?
 そこで、市販されていた12銘柄の補助錠(表1)について、実際にテストしました。



● 補助錠の強さはどのくらいでしょうか?

☆ 引張強度

 測定は、JIS規格注)に従って行いました。その結果、12銘柄中9銘柄は規格を満たしていました(表2)。なお、不適合だった3銘柄(No.379)は、いずれも100円ショップの商品で、ワイヤーやチェーンの太さが比較的細いものでした。また、ダイヤル(以下、「ボタン」を含む)式では、ダイヤルを1つしか施錠しない場合は、全てのダイヤルを施錠した場合に比べて引張強度が小さくなることがありました。そのため、全てのダイヤルを施錠することは引張強度の増大にいくらか効果があるでしょう。

 

注)引張強度:施錠状態で1400Nの力を静かに加えた時に、破損がなく、施錠・開錠に異常があってはならない。

☆ せん断強度

小型ペンチを使った場合、どのくらいの力で錠が切断されるかを調べました。その結果、ワイヤー錠は太さの直径が10 mm以上のものが、チェーンでは3 mm以上のものが切断されませんでした(表2))。また、100円ショップ直の商品については、4銘柄中3銘柄が切断されました。成人男性の平均握力が500 Nですので、これらの商品は、ペンチ等を使って人の力で破壊されてしまう恐れがありました。


● 錆びやすさは銘柄によって違うのでしょうか? 

錆びにより開錠できなくなったという意見があったことから、錠の種類と錆びとの関係を調べました。5%の食塩水を錠に噴霧し続け、開錠できるかどうか24時間毎に確認し、7日間試験しました。表3からわかるように、7日目までに開錠できなくなったものはは5銘柄で、いずれもシリンダー式又は100円ショップの商品でした。シリンダー式は、錠内部で動く距離が短いため、腐食しやすくなっており、しかも、ダイヤル式より開錠に大きな力が必要なためと考えられました注)

      

注)今回の試験は、実際の使用状況よりかなり厳しい条件で腐食を促進させた試験のため、実際の環境にそのままあてはまるとは限りません。

● 固定設備注)について調べてみました

アンケート調査から、固定設備を利用している人は少ないと思われました。そこで、固定設備の設置状況及びそれらの実際の使用状況はどうであるか調べました。

  注)チェーン用バーラック及びサイクルラック

☆ 設備への固定状況は?

補助錠がある自転車(調査台数902台中198台)における補助錠の使用率及び設備への固定率を調査したところ、駅駐輪場や市街地に比べ、ショッピングセンター(SC)でのそれらは低い傾向にありました(表5)。使用者は、自転車から離れている時間や距離及び輪輪場の立地環境によって、施錠方法を変えているようでした。
 なお、調査した駐輪場では、自転車を設備に固定していた人が、補助錠を持っていた人の1割弱だったことから、自転車を補助錠で設備に固定するという設備の利用法の周知が十分でないと思われました。

■□■ 補助錠を買うとき&使うときには □■□
角丸四角形: 1 補助錠は目的、用途に合わせて購入しましょう。(表6を参考にしてください。)
2 固定設備のある駐輪場では、自転車を補助錠等で設備に固定すると、さらに効果的でしょう。(但し、公道のガードレール等への固定は法律で禁止されていますので、専用の固定設備を利用しましょう。)

6 補助錠の種類別長所及び短所

☆★☆ まとめ ☆★☆

角丸四角形: 1 4割の人が自転車盗難に遭ったことがあり、そのうち7割弱は施錠していたにも関わらず盗難に遭っていました。利用者一人一人が、駐輪時間や場所に関わらず、施錠を徹底すると同時に、さらに強力な施錠方法として、ツーロックすることが望まれました。
3 極端に廉価な商品や、ワイヤーやチェーンが細い商品の中には、引張及びせん断強度の弱い商品が、少なからず存在することがわかりました。
4 ダイヤル式の錠で、複数のダイヤルを施錠することは、引張強度の増大に効果があることがわかりました。
5 シリンダー式や極端に廉価な商品には、屋外環境によっては腐食により開錠できなくなる恐れがある商品が存在すると考えられました。
6 固定設備のない駐輪場や、あっても補助錠で固定されていない自転車が多く見られたので、条例注)を踏まえて、固定設備の整備や、その利用法の周知を図ることが望まれました。
注)静岡県防犯まちづくり条例




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