静岡県環境衛生科学研究所

No.118

商品テスト情報

−トマトや野菜加工品中のカロテノイド−


 

食品には「栄養」と「おいしさ」の働きのほかに、人の健康維持に有益な機能があることが最近わかってきました。トマトやにんじんなどの緑黄色野菜は、油でいためて食べることにより、栄養的に優れているということは多くの人に知られています。この緑黄色野菜には、赤や黄の色を示すカロテノイドが含まれています。

 近年、カロテノイドにも癌や冠動脈心疾患などの慢性疾患にも効果のあることがわかってきました。
 そこで、カロテノイドの一種であるリコペンと、β-カロテンについて、トマト加工品や野菜冷凍食品中にどれくらい含まれているか調べてみました。

コペン、β-カロテンとα-カロテン

リコピン(lycopene、リコペン)
 トマトの赤色はリコペンによるものです。トマト以外にもピンクグレープフルーツやすいかにも含まれています。リコペンは、発ガン抑制作用や紫外線による皮膚のダメージの保護等に効果があり、医学研究者の間でも注目されています。

β-カロテン(β-carotene、べータカロテン、ベータカロチン
 かぼちゃやにんじんに多く含まれているカロテノイドで、体内でビタミンA(必須ビタミン)効果があり、最近では栄養以外の免疫促進作用や、老化を防御する作用などがわかってきました

α-カロテン(α-carotene、アルファ-カロテン、アルファカロチン)
 β-カロテンに構造がよく似ています。植物界に広く分布していますが、その量はβ-カロテンに比べてかなり少なく、ビタミンAとしての働きをしますが、その作用はβ-カロテンより弱いと言われています。



=== テストしたのは… ===

 市販されているトマト加工品等19銘柄、野菜冷凍食品7銘柄、その他の食品8銘柄です。

トマト加工品中に含まれているリコペンとβ-カロテンの含有量 

トマト加工品には、リコペンの方がβ-カロテンより多く含まれていました。No.17,18を除き、リコペンはβ-カロテンの20倍以上多く含まれていました。No.5のトマトペーストはリコペンとβ-カロテンどちらも多く含まれており、トマトと食塩だけからできているNo.1No.4No.62倍から3倍多く含まれていました。リコペンは原料トマト由来のものですが、β-カロテンは原料トマトばかりではなく、含有するその他の野菜からも由来するものと考えられます。1


表1 トマト製品中のβ-カロテンとリコペン含有量

No

 

JAS規格の
有無

原料野菜

品    名

β-カロテン

mg/100g

リコペン

mg/100g

1




のみ

有機トマト・ジュースづけ(缶詰)

0.538  

11.3  

2

トマト・ジュースづけ(缶詰)1

0.592  

12.6  

3

トマト・ジュースづけ(缶詰)2

0.450  

10.7  

4

トマト・ピューレーづけ(紙パック)

0.444  

10.4  

5

トマトペースト

1.225  

46.4  

6

トマトピューレー

0.634  

21.7  

7

×

乾燥トマト

0.605  

7.0  

8

×

加工用トマト(イタリアントマト生)

0.398  

6.3  

9




とその他の野菜

トマトケチャップ1

0.737  

23.2  

10

トマトケチャップ2

0.610  

20.9  

11

トマトケチャップ3

0.517  

20.8  

12

トマトケチャップ4

0.579  

21.9  

13

トマトソース

0.553  

19.8  

14

トマトソース

0.476  

21.2  

15

チリソース

0.765  

18.6  

16

×

トマトミックスソース1

0.830  

15.9  

17

×

トマトミックスソース2

0.478  

1.5  

18

×

パスタソース

0.724  

10.1  

19

×

トマトスープ

0.324  

6.3  

○:有り、×:なし

 

トマト加工品のJAS規格

JAS規格のあるNo.16及びNo.915にリコペンが多く含まれてました。JAS規格のないNo.8の生のトマトは、リコペンとβ-カロテンはあまり多く含まれていませんでした。

2 野菜冷凍食品中のβ-カロテン

No

 

β-カロテン

mg/100g

1

かぼちゃ

4.03  

2

ミックスベジタブル

 0.494 

2-1

*にんじん

1.54 

2-2

*グリンピース

0.395 

2-3

*とうもろこし

0.073 

3

ブロッコリー

0.591 

4

アスパラガス

0.362 

5

ほうれんそう

5.12 

6

さやいんげん

0.476 

7

マンゴー

0.556 

リコペンの含有量表示

 No.5,6,13には、リコペンの含有量表示がありました。3つともほぼ表示量どおり含有していました。この表示はリコペンを摂る目安になると思います。No.11は、「大さじ2杯で約1個分のトマトのリコペンが含まれています。」と表示されており、具体的な含有量表示はありませんでした。

野菜冷凍食品のβ-カロテンの含有量

測定した冷凍野菜の中では、かぼちゃとほうれんそうに多く含まれていました。にんじんには、α-カロテンも多く含まれていました。にんじん以外の野菜には、α-カロテンはほとんど含まれていませんでした。ミックスベジタブルのβ-カロテン含有量が少ないのは、β-カロテン含有量の多いにんじんが少なかったからです。2

野菜冷凍食品のJAS規格

「冷凍前の加熱なし」と表示されていても、加熱されているように見えることもあります。変色等の変質を防ぐため、ブランチング(軽く湯通し)してあるためです。

また、「加熱調理の必要性」や「野菜の原料原産地名」もJAS規格により、表示を義務づけられています。

その他の食品のβ-カロテン含有量

かぼちゃ加工品には、β-カロテンが多く含まれていました。 

ピーマンには、よく食べられている緑のものより、赤やオレンジ色のものに多くのβ-カロテンが含まれていました。赤やオレンジ色のものは、緑色のものが熟したものです。この熟す過程で、緑色のクロロフィルが分解してβ-カロテンが生成したため、と考えられます。 

赤色ピーマンの1種を乾燥して粉末化したパプリカにもβ-カロテンが多く含まれていました。3

3 その他の食品中のβ-カロテン

No

   

β-カロテン

mg/100g

1

かぼちゃスープ(レトルト)

 2.94  

2

かぼちゃペースト(缶詰)

3.41  

3

ピーマン緑(生)

 0.183 

4

ピーマン赤(生)

 1.12   

5

ピーマンオレンジ(生)

1.26   

6

オレガノ(乾燥香辛料)

1.45  

7

バジル(乾燥香辛料)

4.91

8

パプリカ(乾燥香辛料)

7.21



※まとめると※

緑黄色野菜からβ-カロテンをとりましょう

 NCI(アメリカ国立癌研究所)は、毎日6mgのβ-カロテンを、緑黄色野菜から摂取するよう推奨しています。トマト加工品や野菜冷凍食品は、廃棄するところもなく、1年中手に入ります。生鮮野菜が手に入らない時にも、これらの野菜加工品を利用して、野菜から毎日β-カロテンを摂りましょう。 

多種類の緑黄色野菜を食べましょう

野菜にはリコペンやβ-カロテンの他にも、ルテイン、ゼアキサンチンやβ-クリプトキサンチン等のカロテノイドも含まれています。いろいろな緑黄色野菜を上手に組み合わせて油で調理して、多種類のカロテノイドを摂りましょう

イタリアン料理

 イタリアンブームで、トマトやトマト加工品を使った料理が人気です。イタリアでは、「トマトが赤くなると医者が青くなる」と言われるくらいトマトは健康に良いと考えられています。イタリアン料理は、油で調理するので、リコペンやβ-カロテンの吸収が良くなると考えられますが、カロリーが高くなるので食べ過ぎに気をつけましょう。




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