|
=== テストしたのは… === 収納容器は、静岡市内のホームセンターなどで売られていた以下の4銘柄です。 容器A プラスチック製、ふた式 (容量約70リットル) 容器B プラスチック製、引出し式(容量約60リットル) 容器C 木製、引出し式、組立て式(容量約20リットル) 容器D ダンボール紙製、ふた式、組立て式 また、防虫剤として、静岡市内のスーパーで売られていたものを使いました。この防虫剤は、固形の防虫剤成分が和紙に包まれており、袋から取り出せばすぐに使えるものでした。 |
◆ パラジクロロベンゼンには、次のような性質があります。
・水に溶けない。アルコールやエーテルに溶ける。
・白色の固体で、薄い濃度では芳香があるが、濃い濃度ではツンとした臭いがする。
・空気中に昇華しやすい。
・主に粘膜(目、鼻、のどなど)を刺激し、鼻水や目の痛みなどの症状が出る。ひどい時には、頭が痛くなったり、吐き気をもよおしたりする。
● 季節の違いで、防虫剤成分の押入れ内の空気中濃度はどのくらい違うのでしょうか?
同じ容器(A)を用いて、夏と冬にそれぞれ防虫剤成分の押入れ内の空気中濃度を測定した結果、図1のように冬よりも夏の方が防虫剤成分(パラジクロロベンゼン)がたくさん揮散しました。参考までに、これを室内空気濃度の指針値※で比較すると、夏の測定終了時には指針値の40倍もの濃度になり、中には不快感を訴える人がいるかもしれません。 なお、温度を10,15,20,25,30℃に設定した状態で容器内にどの程度揮散するかを測定したところ、図2のように温度が高いほどよりたくさん揮散しました。 |
|
※ 室内空気濃度の指針値 厚生労働省が定めた、現時点において得られた科学的なデータを基に、該当する化学物質を人が一生涯取り込んでも健康を害することがないとされる最大濃度のことです。パラジクロロベンゼンの指針値は240μg/m3です。 ※※μg(マイクログラム) |
▼ 収納容器の数を増やすと、押入れ内の空気中濃度はどのくらい増えるのでしょうか?
次に、収納容器の数を2箱にし、それぞれの箱で標準量の防虫剤を入れた場合について押入れ内の揮散濃度を同じように測定し、1箱の場合と比べてみました。図3のように2箱の場合、1箱の時と比べて2倍以上の濃度になっていることがわかりました。
実際には、押入れ内に何箱も容器を積み重ねて収納する場合も考えられますから、その時には、特に注意が必要だと言えるでしょう。
|
◆ 収納容器の違いで、防虫剤成分の押入れ内及び容器内濃度はどのくらい違うのでしょうか?
続いて、収納容器4種類それぞれについて、押入れ内及び容器内の濃度を測定した結果を比較してみましょう。押入れ内の空気中濃度を図4に、容器内濃度を図5にそれぞれ示しました。ここで、収納容器内濃度に対する押入れ内の空気中濃度の比を算出してみると、容器Dで他の容器よりも揮散濃度比※が高くなりました(表2)。
|
この容器Dは、組立ての時に接着剤を使わず、取っ手の付け根や折り目部分などに隙間があり、密閉性が低いものでした。そのため隙間からパラジクロロベンゼンがもれ、容器外(押入れ内)への揮散濃度が高くなっているも のと考えられました。 |
☆ 収納した衣類から防虫剤成分を取り除くには?
長期間防虫剤と一緒に収納した衣類には、防虫剤成分が吸着しています。パラジクロロベンゼンは空気中に揮散しやすいため、図6のとおり取り出した後すぐに使用せず、数日間日陰干しするとほとんど揮散され、残存しにくいことがわかりました。 |
■□■ まとめ 〜 防虫剤を使用するなら 〜 ■□■
1 密閉性の低い収納容器を使って衣類を保存する時 は、収納容器をカバーなどでおおったり、すき間を ガムテープなどでふさぐなど、収納容器から防虫剤 成分がもれ出ないような工夫をしましょう。 |
2 夏などの気温の高い季節に防虫剤を収納容器内へ補充す る時は、押入れを含む室内の換気を十分にしながら行いま しょう。 容器を2箱以上収納している時は特に注意してください。 |
3 袋に書いてある表示をよく読み、標準使用量以上 は使わないようにしましょう。 |
4 防虫剤と一緒に収納した衣類はすぐに使用せずに、日陰又 は風通しの良い場所に数日間つるしてから使うと良いでしょ う。 |